普通のビジネスマンであっても「創造すること」が必要な理由。「物語」のつくり方入門 7つのレッスン




書店巡回中になんとなく手に取り、なんとなく表紙に惹かれて購入した一冊。

「物語」のつくり方入門 7つのレッスン

物語を書きたいと思っている人のために、物語を書くための基礎的な手順をまとめた本書。

小説家や漫画家(漫画原作者含む)、脚本家などを目指す方には勿論、一般のビジネスパーソンにもオススメしたいと感じた理由をお伝えします。

トキネコ
どういうことが学べるのかニャ?
トキタマ
  • 創造をサポートする環境のつくり方
  • 物語を面白くするエッセンス
トキネコ
どういう人にオススメかニャ?
トキタマ
  • 小説家や漫画家(漫画原作者含む)、脚本家志望者など
  • 一般のビジネスパーソン(新社会人からベテラン社会人まで)
  • 創造力、会話力を磨きたい人

何もわからない時はパターンを学んで近道

まず最初に言っておくと、物語の制作を指南するものやストーリー作劇法、脚本術などの本を読んでも、スグにあれもこれもとアイディアが溢れてきたり、素晴らしいストーリーが労もなく手早く書けるようになるわけではありません。

いきなり否定するようで気が引けますが、根本的な創造力というのは一朝一夕に育つものではないということです。

このようなことは、実際に脚本術などの本にも書いてあります。

では、こういった本を読む意味は無いんじゃないか…というと、そんなことはありません。

大事なのは創造力そのものを鍛えることではなく、創造をサポートする環境を最善のものに整えること。

言い換えれば、アイディアを思いつきやすくしたり、良い発想を生むきっかけになるようなコツ(パターン)を学ぶことが大事なのです。


創造力を一瞬でレベルMAXまで高めるような近道はありませんが、発想を刺激し、アイディアを一つの物語に結実させるための環境づくりには近道があります。それが、先人たちが積み重ねてきた思考の結果であり、本書のような指南書でもあります。

天才でも鬼才でもない私は、ありがたく恩恵に与っています。

本書でも冒頭に触れていますが、「物語を書く」ということに決まった手順はありません。

結末から書こうが、キャラの設定から書こうが、それは作者の自由。

しかし、自由と言われると、とたんに手も足も出なくなってしまうのが厄介な所です。

だからこそ、物語づくりのパターンを学ぶことは重要です。

数学でも、公式というパターンが頭に入っていれば、様々な問題においてすばやく解答を導き出すことができる。

ただし、物語には決まった答えがありません。だから、物語づくりのパターンを学習することで、自分なりのパターンを育てて行くことも出来るのです。

本書では、あくまでも物語づくりのサンプルとして、「こうすれば物語が書けるよ」という具体的な手順が示されています。

示されているだけでなく、ステップごとに立ち止まり、読者と一緒に考えるようなスタイルで進んでいくので、読みやすく理解しやすい入門書としてオススメできる一冊になっています。

rawpixel / Pixabay

とにかく読みやすい

本書を広くオススメできる理由の一つは「とにかく読みやすい」ところです。

まず、作劇法など専門的なまどろっこしい話は、ほとんどありません。正しく初心者向け。

しかし、それでいて物語に必要なエッセンスの部分はしっかりとおさえてあり、最低限必要なことを網羅しています。

初心者は、物語のつくり方をイチから学ぶことができ、中級者は、初心に立ち返りながら、作劇の基礎を学び直すことができるのです。

また、分かりやすいという観点から言えば、物語の例がその都度示され、それに近い実例を交えて解説してくれるという点も、オススメできるポイントです。

例えば、プロット(ストーリーの大筋)の考え方を説明するステップでは、日常系やなごみ系のストーリーの話から、「動物のお医者さん」「よつばと!」といった実際の作品を例に解説を展開しています。

他にも、個性的なキャラクターを考えるステップでは「デスノート」、援助者の役割と注意点を考えるステップでは「ハリーポッター」が例として挙げられ、本書の内容と対比させながら話が進んでいきます。

DEATH NOTE デスノート(1) (ジャンプ・コミックス)

DEATH NOTE デスノート

よつばと!(1) (電撃コミックス)

よつばと!

レッスン形式で物語をつくりながら進む

何かを学ぶ際に大事なのは、実際に頭を働かせ、手を動かすということです。

『「物語」のつくり方 7つのレッスン』では、受講生と講師が会話形式で物語のつくり方を学びながら、実際に一つの物語をイチから練り上げていきます。

スタートレッスンでは、まず読者の現状を把握するため、物語が「書けない」理由を紐解くチェック項目がいくつか用意されています。

これから書こうと思っている作品について

Q.その作品のタイトルは?

Q.その作品は、いつの時代のお話ですか?

Q.その作品はどこを舞台にしたお話ですか?

Q.その作品の主人公について教えて下さい(氏名、年齢、職業、性格など)

など、自分がこれから書こうと思っている物語について決まっている事柄があれば、実際に埋めながら読み進めていきます。

決まってないことがあるのは当然です。その場合は空欄にしてどんどん進みましょう。

物語をつくることが目的でない人も、適当な設定を書き入れて読み進めると、より楽しめます。

初心者に日常モノは難しい

ごく普通の主人公が、ごく普通に恋をしたり、ごく普通のトラブルに巻き込まれたりする様子を面白おかしく描くのは、実はとても難しいことです。

初心者のうちほど、極端な状況、極端なキャラクターを使ってお話を作ることを練習していただきたいと思います。

『「物語」のつくり方 7つのレッスン』p103より

と、あるように、何気ない日常の描写こそ初心者にとっては難儀です。

これは、創作に限ったことではありません。

例えば、飲み会で上司と何気ない会話をするときを思い浮かべて見て下さい。

自分のエピソードや知り合いのエピソードを話すにしても、大抵は何か突拍子もないトラブルに巻き込まれた話や、自分の中で「面白い」や「驚いた」など感情が多少なりとも動いた話をしたいと思うのが普通ではないでしょうか。

あなたの何でもない日常。

例えば「今日は朝6時に起きて、歯を磨いた後、新聞を読んだんですよ~」とは中々話さないですよね。

無意識にいつもとは違う”何かがあった”話をしたいと思い、実際にそのような話をする。

それは無意識に自分が求めている話でもあり、相手もそういう話を求めているんだろうなと思って話すのではないでしょうか。

また、こういったトラブル話は、構成よりも内容が重視されるため、それほど技術がなくても面白い話になる可能性が高く、逆に「何でもない日常の話」は、話し手の技術が要求されます。

だからこそ、日常系の話を面白く展開するのは難儀であり、技術が必要とされるのです。

私が、一般のビジネスパーソンにもオススメしたい点はここにあります。

「物語のつくり方」は「トークのつくり方」でもあると感じたからです。

起承転結を考え、順序立てて筋の通った構成を考えるという点は一致していると思いませんか?

まとめ

作家でもない私が言うのも大変恐縮ですが、「物語を創る」という行為は決してプロだけのものではありません。

勿論、誰もプロだけのものなんてことは言っていません。

書く側が勝手に壁を感じてしまっているだけ。

別に、誰がどんな物語をどんな目的で創ろうとも構わないわけです。

そして、その手法は作劇だけでなく、様々な分野で応用できるということ。

私は、就職して以来ずっと事務畑で仕事をしてきましたが、本書の内容はビジネスにも応用できると感じています。

何か企画や職場改善のアイディアを考えたり、上司や関係者とコミュニケーションをしたり。

「創造力」は、そういった場でも力を発揮してくれます。

書店の自己啓発本コーナーでも「会話術」なる本はよく見かけますが、もしかしたらそういった本よりも、本書のほうが合っているという人は決して少なくないと思います。

創作に興味が無い方にも是非一読いただきたい。

そんな本でした。

Leason1 物語のおおまかな輪郭を作る

Leason2 物語全体の流れを作る

Leason3 キャラクターの考え方

Leason4 主人公を作る

Leason5 敵対者を作る

Leason6 援助者を作る

Leason7 ディティールと演出


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