地方創生に携わる方が読んでおくべき1冊。「地元経済を創りなおす」消滅可能性都市が描く、生き残りをかけた未来。




こんにちは。トキタマです。

つい先週くらいに、ちょっといい本を読んだので、ご紹介したいと思います。

今回は「地方創生」に関する本です。

「896」

「地方創生」や「地域振興」「まち・ひと・しごと創生本部」など。

おそらく、そういったワードで調べ物をしている皆様にとってこの数字は馴染み深いのでは無いでしょうか。

これは、2040年までに消滅する可能性がある896市町村の数を表しています。

日本創生会議の人口減少問題検討分科会が発表した通称「増田レポート」という報告でこの試算結果が明らかになりました。

このレポートでは、2040年までに20~39歳の女性人口が半減する自治体を「消滅可能性都市」と定義。日本には約1800市町村が存在しているため、896という数はおそよその半分を締めていることになります。

歯止めがかからない少子高齢化に加え、東京をはじめとする首都圏への人口一極集中。若者が減少し、活力を失った地方はどんどん衰弱していきます。

消費者の母数が減り、経済規模は縮小。事業者は後継者不在の状態に陥り廃業へ一直線の状態です。シャッター通りが増え、ますます寂れていく地域が現実に多く存在しています。

そんな疲弊しきった地域経済に対して、分析・診断・対策の3つの側面からアプローチし、持続可能な地域経済実現のためのPDCAサイクルを具体的に提示しているのが本書「地元経済を創りなおす―分析・診断・対策」です。

地方創生・地域振興事業などを研究している学生や実際に仕事で携わっている方々には是非読んでいただきたい内容が詰まっています。

「地産地消」から「地消地産」へ

地産地消とは、ご存知の通り「地域で生産されたさまざまな財(農産物や水産物など)をその地域で消費する」こと。地域生産・地域消費の略語です。

地域振興・地方創生事業を推進する中で必ず直面するテーマではないでしょうか。

本書でも「地域での生産と消費」にクローズアップしておりますが、そのアプローチは従来の「地産地消」の考え方とは異なります。

「地域でできたものを地域で食べよう」ではなく、「地域で消費しているものを地域で作ろう」

―地元経済を創りなおす 第5章 身近な「漏れ穴」をふさぐ(p70)

つまり、大切なのは「地域で消費されているのに、地域で供給されていないもの」=「地域で生産・供給すれば、地域で消費してもらえるであろうもの」を見つけ出し、それを供給すること。

需要があることが分かっている事業は成功する可能性が高い。まさに「漏れバケツの穴」をふさぐ考え方と言えます。

「地消地産+域内循環向上=所得が確保できる新規事業→定住」という、地方創生のお手本となる考え方です。

―地元経済を創りなおす 第5章 身近な「漏れ穴」をふさぐ(p72)

 

はじめの一歩となる出口戦略

地域で消費されているけど、地域で生産されていないものを見つけたら、どうすればよいか。言い換えると誰が生産すればよいかということ。

大きく分けて以下の二つです。

  • その地域に住んでいる人自身が生産する
  • 生産できる人を他の地域から連れてくる

また、外から人を呼ぶ場合は定住して貰う必要があり、生産を続けていける環境や状況など、持続可能な生産環境の整備が求められます。

だから、新規事業を考える際には、どうやって生産者たちに財やサービスを持続的に提供してもらえるかも考えなければなりません。

そのために大事なのは、生産物の「出口=市場」戦略、つまり継続して販売できるものを考え、作っていくことです。

また、多くの場合、すでに出口=市場があるものを対象に、「域外からの調達から、域内での生産へ」と切り替えていくことが最初の一歩になります。

―地元経済を創りなおす 第5章 身近な「漏れ穴」をふさぐ(p74)

 

RESAS(リーサス)

地域の現状分析をするために使用するツールの1つとして、「地域経済分析システム(RESAS:リーサス)」が紹介されています。

RESAS(リーサス)ホームページ:https://resas.go.jp/#/11/11239

このRESASというシステムは、政府のまち・ひと・しごと創生本部が経済産業省と連携して提供しているサービスで、誰でもインターネットからアクセスできる経済分析システムです。

RESASは、国勢調査、経済センサス、商業統計調査など政府の経済統計だけでなく、民間のデータも取り込んでおり、ビッグデータを複合的に分析することが可能となっています。

2015年4月から運用されているので、目新しい情報ではないですが…一応こういった分析をすることができます。

 

 

自治体関係者や地域振興に携わる事業者の方はもうおなじみのシステムですね。

RESASのリリース当初は各地で活用法に関する講演会などが行われていました。

RESASが面白い部分は人口推移や産業構造データの分析だけでなく、「目的地」や「宿泊施設」など観光的な分析や「通勤通学人口」や「滞在人口」などまちづくり的な分析など、多様なデータを扱うことができるところです。

使ったことがない人は一度アクセスして使ってみて下さい。

実際に自分の済んでいる地域や地元の数値を見ながら本書を読むのも面白いと思います。

究極の地元愛は究極に地元を知ること

地元愛や地方創生と言ったワードを見ると、「内向的」や「排他的」といったようなイメージを抱く方もいると思います。

ですが、それは本質的なものではありません。

必要なものを必要なところで必要なぶんだけ作る。これは本来の経済の形とも言えます。

地方経済が活力を取り戻し、再び産業基盤を盤石なものにすることこそが、将来の日本経済を支える屋台骨となるのではないでしょうか。

地域を徹底的に分析し、現状を診断、そして実際に対策を講じる。

究極の地元愛は、究極に地元を知ることでもあったのです。

トキタマ的注目ワード【4選】

是非、本書でご確認下さい。

  1. LM3

  2. コミュニティパワー

  3. 地域内乗数効果

  4. リ・ローカリゼーション

 

目次
序章 なぜいま、地域経済か
第1章 地域へ戻りつつある経済
第2章 あなたの地域は「漏れバケツ」?
第3章 まずは地域全体の漏れの度合いを知る
第4章 地域の「どこで、どれくらい漏れているか」の詳細を知る
第5章 身近な「漏れ穴」をふさぐ
第6章 「最大の漏れ穴」をふさぐ
第7章 「漏れ穴」をふさぐ新しい資本主義
第8章 地域経済を考え直す―水俣市と下川町はいま
第9章 地域経済を取り戻す―トットネスで始まる「新しい物語」


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