先日、書評の記事でご紹介した「地元経済を創りなおす」という本。
今日は、その中で登場した「RESAS(リーサス)」という地域分析ツールについてのお話です。
RESAS:リーサスとは
RESAS(リーサス)とは、経済産業省と内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)が提供しているシステム。官民で蓄積されたビッグデータを集約することで、各地域の産業構造や人口動態、人の流動などを「見える化」し、地方創生事業の効果的な運用に役立てることができます。
RESASは、2016年9月のリリース以降、日本全国の自治体でさまざまな事業に活用されており、現在ではRESASの集積データを用いた関連アプリの開発や政策立案ワークショップなど、情報化社会に相応しいビッグデータを使った取り組みが継続的に行われています。
RESASの使い方・活用方法
RESASでは、膨大なビッグデータをもとに、実に多様な分析を「誰でも・手軽に・無料で」行うことが出来ます。
自治体・地方創生事業関係者だけでなく、民間の企業でもマーケティング調査の一環として十分な役割を果たしてくれるシステムと言えます。
以下、RESASを使って分析できることをまとめました。
人口構成、人口増減、人口の自然増減、人口の社会増減、新卒者就職・進学、将来人口推計、人口メッシュ、将来人口メッシュ
地域経済循環図、生産分析、分配分析、支出分析、労働生産性等の動向分析
- 全産業……全産業の構造、稼ぐ力分析、企業数、事業所数、従業者数(事業所単位)、付加価値額(企業単位)、労働生産性(企業単位)
- 製造業……製造業の構造、製造業の比較、製造品出荷額等
- 小売・卸売業(消費)……商業の構造、商業の比較、年間商品販売額、消費の傾向(POSデータ)、From-to分析(POSデータ)
- 農業……農業の構造、農業産出額、農地分析、農業者分析
- 林業……林業総収入、山林分析、林業者分析
- 水産業……海面漁獲物等販売金額、海面漁船・養殖面積等分析、海面漁業者分析、内水面漁獲物等販売金額、内水面漁船・養殖面積等分析、内水面漁業者分析
- 企業情報……表彰・補助金採択、創業比率、黒字赤字企業比率、中小・小規模企業財務比較
- 海外取引……海外への企業進出動向、輸出入取引、企業の海外取引額分析
- 研究開発……研究開発費の比較、特許分布図
- 国内……目的地分析、From-to分析(宿泊者)、宿泊施設
- 外国人……外国人訪問分析、外国人滞在分析、外国人メッシュ、外国人入出国空港分析、外国人移動相関分析、外国人消費の比較(クレジットカード)、外国人消費の構造(クレジットカード)、外国人消費の比較(免税取引)、外国人消費の構造(免税取引)
From-to分析(滞在人口)、滞在人口率、通勤通学人口、流動人口メッシュ、事業所立地動向、施設周辺人口、不動産取引
一人当たり賃金、有効求人倍率、求人・求職者、医療需給、介護需給
自治体財政状況の比較、一人当たり地方税、一人当たり市町村民税法人分、一人当たり固定資産税
※RESAS操作マニュアルダウンロードページより抜粋
これだけの分析が簡単に出来てしまうんです。驚きですよね。
今までであれば、政府の統計資料からデータを引っ張ってきて、そこから数値をグラフ化する作業が必要でした。
各年の比較データなんて、複数のデータをダウンロードしてまとめる必要があるから、もう面倒くさいったら……。
などという小言もRESASは解決してくれます。学生時代に出会えていたら、どれほど良かったことか。
そして何より眼を見張るのが、RESASの「親切心」。
操作マニュアルが異常なほどに充実していて、ユーザビリティが高いのです。
先述の「地域経済循環図」や「生産分析」、「分配分析」など、RESASで出来る項目の全てを網羅した操作マニュアルは、本屋に並んでいても良いレベルです。
実際にRESASで分析してみた
大項目の「企業活動マップ」から「企業情報」、「創業比率」を選択し、埼玉県さいたま市の創業比率に関するデータを見てみます。
創業比率とは、その地域の起業・創業の活発度合いを示す指標です。
創業比率の定義
創業比率とは、「〔1〕新設事業所(又は企業)を年平均にならした数」の「〔2〕期首において既に存在して いた事業所(又
は企業)」に対する割合であり、〔1〕/〔2〕で求める。廃業率とは、「〔1〕廃業事業所(又は企業)を年平均にならした
数」の「〔2〕期首において既に存在していた事業所(又は企業)」に対する割合であり、〔1〕/〔2〕で求める。総務省「平成 21 年経済センサス-基礎調査」に基づく 2006-2009 年の創業比率・廃業率の計算方法より
埼玉県内での平均と全国平均が出ていますが、さいたま市はどちらの数値も上回っています。
2004~2006年の数値が平均と比べると突出していることがわかります。
さいたま市では2004年に大型ショッピングモールがグランドオープンしていますが、このあたりも起業・創業が伸びた要因の一つなのかもしれません。
さいたま市の創業比率順位は都道府県内で2位、全国で106位という成績でした。かなり優秀と言えますね。
ちなみに、県内の1位はどこかというと……
ふじみ野市でした。
RESASでは、比較分析も簡単に出来ます。
サイドメニューから、比較地域を追加していくと……
このように、複数地域の比較分析も手軽に出来ます。
上記画像は「さいたま市」に「川越市」「秩父市」「熊谷市」を加えたグラフです。
優しすぎる便利機能
膨大な分析データに加え、RESASには便利な機能も付属しています。
画面キャプチャ
グラフやヒートマップなど、視覚的な分析データを簡単に画像化してダウンロードすることが出来ます。
ダッシュボード
項目の異なる分析データを保存しておきたい時はこれ。ダッシュボードに追加しておくことで、他の項目で分析を行ったあとでも前の分析データを呼び出すことが出来ます。
まとめ
RESASで出来ること、基礎知識について、なんとなくお分かり頂けたでしょうか?
このサービスと、先日ご紹介した「観光予報プラットフォーム」を組み合わせると、なかなか面白い使い方が出来そうですよね。
つい先日2018年4月13日のリリースでは、「RESAS入門資料(人口・産業・観光編)」というものが公開されました。
この資料では、富⼭県氷⾒市、⼤阪府⼋尾市、岩⼿県花巻市の3市を例に、人口・産業・観光にクローズアップした分析サンプルがまとめられています。
使い方の参考にもなりますので、気になる方はRESASのトップページから確認してみて下さい。