AI時代にヒトが”輝き”活躍するために必要な”3つの能力”を伸ばす方法。色々と考えてみた。




「AI(人工知能)」というワードが会話に出てくると、大抵同じような議論になることが多いと思いませんか?

「AIが人間の能力を超える」

「AIに仕事を奪われる」

「シンギュラリティが到来する」

こんな感じです。正直、もう聞き飽きましたよね。

そもそも「AI vs.人間」というような構図になったのはいつからなのでしょうか。

将棋や囲碁の世界で「AI」と「人間」が対局する催しが注目を集め、それがいつしか他の分野でも同じ様な視点での捉え方をされ始めたように感じます。

Seanbatty / Pixabay

また、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン博士が、カール・ベネディクト・フライ氏と共著で発表した「未来の雇用」という論文も、AIと人間の対立構造の輪郭を濃くした一因かもしれません。

「未来の雇用」では、コンピュータ技術によって代替される人間の仕事について分析されており、米国労働省のデータに基づいて、702の職種がどれだけAIやロボットなどのコンピュータ技術によって自動化されていいくかが論じられました。

そして、「今後10~20年程度で、米国の雇用者の半分に相当する約47%もの仕事が自動化されるリスクがある」と結論づけています。

この論文は世界に衝撃を与えました。特に日本のメディアでは「AIの脅威」として様々な特集が組まれ、論争が強まったというイメージがあります。

さて、2018.05.12号の週刊東洋経済では「AI」についての特集が組まれていました(AI時代に勝つ子負ける子)。

面白い内容だったので、個人的に感じた点、今後伸ばすべき能力について書いてみました。

シンギュラリティ(技術的特異点)
人間によって生み出されたAIが人間の知能を超える特異点(テクノロジカル・シンギュラリティとも呼ばれる)。AI自身が自らの能力を超えるAIを無尽蔵に生み出すような未来。2045年に訪れる説や、それよりももっと早く訪れる説、逆に訪れることはないとする説などがある。

過度な楽観や悲観で見誤る現状

では最初に、AI(人工知能)の技術に関して、巷で流れている定説のようなものをいくつか羅列してみましょう。

これらは本当に正しい…?

  1. AIによって自動化が進めば、多くの人の職が奪われる(失業に繋がる)。
  2. 高レベルのAIによって更に高レベルなAIが新たに生み出され、人間によるコントロールができなくなる。
  3. AIを導入すれば簡単に生産性を向上させることが出来る。
  4. AIの導入によって、人件費を丸々カットできる。

近年、あらゆる分野でオートメーション化が進み、機械学習の中でもディープラーニングが発展。AI(人工知能)の技術的進歩に関するニュースには事欠きません。

では、上述のようなことは本当に起きるのでしょうか。

これらは完全な誤りとも言えませんが、誤りです。

修正を加えるとすれば、このような感じでしょうか。

煽られた論争に於いては本質的ではないノイズ情報が多い

  1. 職ではなく”作業”が”代替”される。
  2. ”全てにおいて人間を超える”ようなAIは生まれない。
  3. 試行錯誤によって生産性を向上させることが出来る。
  4. 本質的にスタンドアローンなAIは無い。人間によるコントロールが必要な以上、人件費の完全カットは非現実的。

巷に流布されている定説もどきは正否云々よりもまず本質的ではないのです。

私は、AI研究に詳しいわけでも専門家でもないので、判断基準は専ら文献によるところが大きいのですが、中でも、国立情報学研究所社会共有知研究センター長の新井紀子(あらいのりこ)教授は、かなり論理的な見解を持っている識者の一人です。

新井氏による見解を自分なりに噛み砕いてみると、

数学で分かることは「論理」「確率」「統計」の3つであり、それはAIも同じ。人間が有するクリエイティビティや知的活動の全てを「論理・確率・統計」の3つで分析することは不可能。AIは計算機であり、数字に置き換えられないことは計算できないため、人間と同等、あるいは全ての面で人間を超えるようなAIは存在し得ない。シンギュラリティの到来する可能性は限りなくゼロに近い。

私は、大体こんな感じなのではないかと認識しています(新井氏の文献やコラムなどを読んで私が勝手に解釈したものです)。

様々な分野でAIやロボットが導入され、多くの識者が技術的シンギュラリティやAI失業の可能性を論じていれば、社会全体がAIの脅威を取り違えるのも無理はありません。

ですが、そもそもを言えば、ヒトとAIは競い合ってどちらか一方を潰さなければならない訳ではないはずです。

新井氏の手がけた「東ロボくん」などの取り組みを見れば、AIに「できないこと」「不得意なこと」は確かにあるのだと分かります。

ヒトとAIそれぞれの得意分野と不得意分野を認識し、適材適所で順応すれば良い話です。

伸ばすべき3つの能力(読解力・論理力・数学力)

週刊東洋経済2018.05.12号の特集では「AI時代を生き抜くための3つの能力」として「読解力・論理力・数学力」が挙げられています。

一つずつ見ていきましょう。

①読解力

読解力とは、簡単に言えば文章を読み取る力のこと。

早速ですが、以下の問題にチャレンジしてみて下さい。

知識は必要ありません。単純に「読み取る力」が問われます。

アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。

Q.上記の文脈において、以下の文中の空欄に当てはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

セルロースは(     )と形が違う。

①デンプン ②アミラーゼ ③グルコース ④酵素

―2018.05.12号東洋経済「AI時代に勝つ子負ける子」p22より

答えは本記事の一番下

いかがでしたでしょうか。

簡単でしたか?それとも解答に一抹の不安がありますか?

読解力テストは知識を問うものではないので、小学生でも難なく正解できます。

しかし、不思議なことに大人でも間違えるのです。ちなみに、この問題は新聞社の論説委員や経済産業省の官僚も間違えたそうです。

一般的な受験などのテストと異なる点は、文章の中に「正解」が書いてあるということ。それを見つけ出す力が問われるのです。

読解力を鍛えるトレーニング(勉強法)

  • 文章に触れる

普段の生活から文章に触れる機会を持つ。基本的ですが、とても大事なことです。本や新聞を読むことに高いハードルを感じるのであれば、目にする活字をとりあえず読むということから始めても良いのではないでしょうか。文章を好きになる必要はありません。慣れれば良いのです。

  • 色々な人と会話をする

文章を読むというプロセスはありませんが「会話をする」という行為には読解力が必要です。相手が話している内容を聞き、頭の中で整理して、それに合った言葉を選び出す。

子供から大人まで、幅広い世代の人と関わりコミュニケーションを取ることで、読解力は鍛えられるはずです。

  • 問題をたくさん解いてみる

最近は読解力を測るテストとして「リーディングスキルテスト(RST)」というものがメディアでよく取り上げられています。

ネット上でも例題にチャレンジできますので、暇な時に是非やってみてください。

読解力テスト(リーディングスキルテスト)の攻略法

とは言いつつも、学術的な勉強と違って「読解力」を伸ばすという鍛錬は成果が見えにくいものです。

本を読み、多くの人と会話をしたからといって、読解力テストの数値が飛躍的に伸びるわけではないからです。

では、どうしたら良いのか。

効果的な攻略法が1つだけあります。それは、

「ちゃんと読む」

単純ですよね。ですが、私はこれが一番重要だと考えます。

リーディングスキルテストの問題に何人かで取り組む機会があったのですが、簡単な問題で間違えた人に共通しているのは「ちゃんと読んでいない」ということ。

「あ~そういうことか~」「ちゃんと読んでなかった~」

これらは一見すると言い訳のように聞こえなくも無いですが、意外と本質を捉えています。

読解力テストはなぞなぞではありません。答えは目の前にあります。ゆっくり、ちゃんと読めば見えるはずです。

②論理力

論理とは、物事に対する自分の考えを正確に理解してもらうために、筋道を立てて相手に伝えること。論理力はそれを実現する能力を指します。

2人以上でチャレンジ

【問題例】あなたは犬を飼いたいですか?

ルール
Step1.「あなたは犬を飼いたいですか?」に対して、「はい」、または「いいえ」で答える

Step2.「はい」、または「いいえ」と言った後に、文章で自分の意見を言う

Step3.意見の後には「なぜなら~」と理由を言う

―2018.05.12号東洋経済「AI時代に勝つ子負ける子」p31より

これは、「犬を飼いたいか」という問に対して、自分の意見とその理由を述べるだけの単純なトレーニングです。

重要なのは、「はい」「いいえ」の後に理由を必ず述べるという点。

論理力の基礎になるのは「だから」や「なぜなら」といった接続詞であり、前の文章と後の文章の繋がりを理解する力です。

論理力を鍛えるトレーニング(勉強法)

  • 文章を書く

基本的であり効果的な方法です。一つの事柄に対して複数の意見を書き出してみましょう。その際に接続語を意識して、色々な言い回しで書くことをオススメします(しかし、つまり、たとえば…など)。

  • ヒトと積極的に話す

読解力と同じく、会話に寄って論理力も鍛えることが出来ます。どちらかが一方的に話すのではなく、いい塩梅で相槌を打ち、自分の意見を論理立てて述べるようにしましょう。

  • 公務員試験でおなじみ「小論文」を書く

個人的に一番オススメのトレーニング法です。

公務員試験には一般常識や数的推理などの他に「論作文試験」というものがあります。

制限時間内に指定されたテーマで小論文を書く試験です。文字数は試験のレベルによって800文字、1200文字、1500文字など様々ありますが、最初はボリューム少なめの問題にチャレンジしましょう。

これは公務員を目指していない人にもオススメできます。毎日やる必要は全く無いので、思い立ったときにやってみてください。

テキストは新しいものである必要がないのでブックオフの108円本で十分です。小論文のテキストには多様なテーマと例文が載っているので、眺めているだけでもかなり参考になります。

制限時間内に、指定されたテーマで、ある程度の文量を論理立てて書くというのは割と骨が折れますが、取り組むだけの価値はあります。

私はこのテキストを使っています。

③数学力

早速ですが、以下の問題にチャレンジしてみて下さい。

(問題)偶数と奇数を足すと、答えはどうなりますか。次の選択肢のうち正しいものに○を記入し、そうなる理由を下の空欄で説明して下さい。

①いつも必ず偶数になる

②いつも必ず奇数になる

③奇数になることも偶数になることもある

(理由)

 

―2018.05.12号東洋経済「AI時代に勝つ子負ける子」p40より

答えは本記事の一番下

どうですか?

中学2年生レベルの問題ですが、大学生の正答率は約2割だったそうです。

数学力で重要なのは公式などに代表される数学の知識よりも、数学的思考や算数の計算です。

特に比率や割合などの問題は正答率が低いようですね。

数学力を鍛えるトレーニング(勉強法)

  • 公務員試験でおなじみ「数的推理・判断推理」を解く

またしても公務員試験の登場です。公務員試験は意外にも脳トレにいいんです。

数学的思考を鍛えるのであれば、数的推理の問題を解くと良いと思います。

こちらは一般常識で出題される「数学」とは違い、中学生レベルの数学がわかれば問題なく解くことができるのですが、苦手な人が多い分野です。

小論文と同じく、古本屋に行けば108円で入手できますので、是非見かけたら買ってチャレンジしてみて下さい。

週に1回1時間やるだけでも、いい頭の体操になります。

私はこのテキストを使っています。

AI時代を生きるということ

結局の所、ヒトにしか出来ないことがあるのであれば、それを徹底的に伸ばせばよいということです。

そして、それは定量的に測ることのできる能力だけの話ではありません。

「謝罪」や「感謝」といったヒトの感情に対して”真に”訴えかける行為はロボットで代替できないはずです。

謝罪会見やクレームの対応にロボットがでてきて「大変申し訳ございませんでした」と謝罪されたらどうでしょうか。

地球で生きる人間の人口よりもAIやロボットの方が多くなれば、それでも良いかもしれませんが、実際そうではありません。

もちろんこれは一例に過ぎません。ヒトにしか出来ないこと、ヒトが得意なことはたくさんあります。

真偽不明な定説に流されて悲観する必要は全く無いのです。

問題の答え

  • 読解力の問題→①デンプン
  • 論理力の問題→②いつも必ず奇数になる

②の理由.偶数と奇数は、整数m,nを用いて、それぞれ2m、2n+1と表すことができる。この2つの整数の和は、2m+(2n+1)=2(m+n)+ 1となる。m+nが整数なので、この和は奇数である。


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