- 仕事をミスなくこなして定時には退勤し、趣味やプライベートを全力で楽しんでいる人。
- 会社の経営やプロジェクトの推進などで自由な時間が無いはずなのに、様々な会合に顔を出し、家族との交流の時間もしっかり取っている会社の社長。
忙しく時間がないように見えるのに、他の人よりも充実した毎日を送っている…。
どうしてこのようなことが出来るのでしょうか。
答えは簡単。彼ら彼女らは「幸福度が高い」のです。
こういった人たちの状態を言い換えれば、「積極的な行動によって幸福度の高い状態を手にしている」ということ。
にわかには信じられないかもしれませんが、これは科学的に証明された事実なのです。
では、もう一つ質問させてください。
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「幸せ・幸福度」は胡散臭い…?
私自身、「感謝!幸せ!引き寄せ!」のように、ただ単に聞こえの良さそうなワードを並べ立てるだけの根拠のない自己啓発の手法や、明らかにマネタイズがベースになっているような宗教などは基本的に信用しませんし関わろうとも思いません。
そうなってくると今回の記事の導入部分はなんだか怪しい…。
そう思われても仕方がありません。
「幸せ」や「幸福度」などという言葉を使うと、途端に胡散臭い宗教じみた感じがしてしまいますよね。
これはおそらく、目に見えず定義の難しい性質の「幸せ」という概念が、その”曖昧”な性質を担保として都合の良い使い方(とりわけ根拠のない説など)をされてきたからでしょう。
ですが、この「幸せ」については日々様々な研究がされており、実際問題バカにはできません。
ビッグデータと緻密な科学的検証によって「幸せ」の正体は解明されていたのです。
「幸せ」はプラス思考を引き出すトリガー
では何故、「幸せ」という曖昧なものが人の能力や生産性に影響を与えるのでしょうか。
それは、「幸せ」を感じる器官は「脳」であり、「幸せ」を感じること自体が「脳」のあらゆる働きを活性化させるトリガーになっているからです。
そして何より直視すべきは、「幸せ」や「幸福」という目に見えないモノがもたらす「脳」へのポジティブな効果が”定量的なデータ”に基づいて科学的に証明されているという点。
「やる気」や「集中力」「モチベーション」といった言葉はよく耳にしますが、実際これらも「幸せ」と同じように目に見えない曖昧なものです。
ですが、これらは人間の生産性や、キャリア形成、収入に影響する重要な要素であると言えます。
思考力、記憶力、集中力、やる気、モチベーション。大きな枠組みで言えば、どれも「脳」が司る要素であり、その水準は高いに越したことはありません。
近年、最新の研究によって「幸せ」「幸福度」といったものが定量的なデータとして把握され、その正体が分かってきているのです。
脳を活性化させるには、脳の欲求を満たせば良い
好きなことを楽しむ。
本能の赴くまま、自分のやりたいことを何の雑念にも囚われずに心から楽しむ。
脳の欲求を満たすことで、脳が活性化して生産性やクリエイティビティが向上することが後述の研究で分かっています。
何も我慢する必要が無いのですから、こんなに簡単なことはないはずなのに、現代人はこれがなかなか出来ていないのが実情です。
好きなことを楽しむことで、脳を活性化させることができるということは、逆を言えば好きなことを楽しむことができなければ、脳の活動は停滞したものになってしまうということです。
更に具体的な話をすれば、やる気が出なかったり、集中力やモチベーションが維持できなかったり、物事に対する思考力や記憶力が低下している人は脳の欲求を満たせていないため「幸福度」が低く、脳の活動が低下している可能性があるのです。
そもそも、脳には「幸せになりたい」というとてもシンプルな欲求が本能として備わっています。
このシンプルな欲求に応えることが、脳を活性化させ、幸福度を上げる手段になり得ます。
この記事の冒頭でお聞きした、
『皆さんは1日にどれだけ「幸せ」を感じていますか?』
という問い。
この答えに悩んでしまった方は、もっと積極的に脳の本能的な欲求に応えることで、生産性を向上させられるかもしれません。
なぜ好きなことを楽しむだけで、幸福度と生産性が向上するのか
ビッグデータとウエアラブルセンサ(人の体に装着する加速度センサ搭載のデバイス)を用いた研究で世界をリードしている研究者の矢野和男氏による著作『データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』では、興味深い研究の成果が詳細に記述されています。
矢野氏はウエアラブルセンサを用いて「ハピネスレベル(幸福度)」を定量的なデータとして計測するという研究を行い、以下の結論を導き出しました。
幸福な人は、仕事のパフォーマンスが高く、クリエイティブで、収入レベルも高く、結婚の成功率が高く、友達に恵まれ、健康で寿命が長いことが確かめられている。
定量的には、幸せな人は、仕事の生産性が平均で37%高く、クリエイティビティは300%も高い。
『データの見えざる手』著:矢野和男 より(P71)
驚きの結果です。何故「幸福」は、このような成果をもたらすのでしょう。
幸福(ハピネス)の心理学が専門であるカリフォルニア大学のソニア・リュボミルスキ教授の研究によれば、ハピネスを高める施策を行うことで、人の行動にも変化が生じると予想されていました。
しかし、従来の方法ではハピネスを測定すること自体が難しく、この予想の真偽を検証することができませんでした。
そこで用いられたのが、人に装着して人体活動に関するあらゆるデータを収集するウエアラブルセンサ。
矢野氏とリュボミルスキ教授が手を組んで行われたこの研究では、ある会社のオフィスで首から下げる名札型のウエアラブルセンサを用いて、主に以下の要素を定量的なデータとして検出し、分析が行われました。
- 誰と誰がいつ、何分間対面したか
- 身振りの大きさ・頻度、歩行・滞在の別
- 事務所、バックヤード、休憩所など、どこにいたか
社員は朝出勤したら、名札型のウエアラブルセンサを首から下げ、いつもどおり仕事を開始します。
このウエアラブルセンサには赤外線センサが内蔵されているため、人と対面したり、すれ違ったり、複数人で会議をしたり、といった詳細な情報を全て記録することができます。
では、この研究でどのようなことが明らかになったのか。
それは、ハピネス(幸福)と身体活動の総量との間に強い相関があったということ。
別の言い方をすれば、人の内面にあると思われていたハピネス(幸福)が、実は、身体的な活動量という外部要素の中にあり、実際に計測されたということです。
幸せな人に共通している特徴
この研究で明らかとなった、身体活動とハピネスの関係性。
それを裏付けているのは「幸せな人」に共通している事実であり「幸せな人の体はよく動く」という単純なものでした。
もちろん、仕事の内容が違えば体の活動量も違いますが、この研究ではそのあたりも考慮されています。
その上で、人は幸せになると、より動く頻度が増え、より幸せになった人は、より動くということがわかったのです
これは「幸せ」が積極的な行動と強く結びついていることを表しています。
仕事ができるから幸せか、幸せだから仕事ができるのか
仕事で一定の成果を出し、幸せな人生を手にしている人は、見方を変えれば「幸せだから仕事で成果を出せている」とも言えます。
一体どちらが「原因」でどちらが「結果」なのでしょうか。
一見、「鶏が先か、卵が先か」のような因果性ジレンマにも思える問いですが、そうではありません。
答えは明確で
「幸せだから成果が出ている」
のです。
重要なことは、仕事ができる人は成功するので幸せになる、というのではなく、幸せな人は仕事ができるということだ。そして、ハピネスレベルを高めるのは、成功を待たずとも、今日ちょっとした行動を起こすことで可能なのである。
『データの見えざる手』著:矢野和男 より(P71)
まとめ【仕事の生産性とクリエイティビティを高める方法】
これまでのお話で、「幸せ」や「幸福度」が人間の思考や行動にポジティブな影響を与えることはお分かりいただけたと思います。
- 人は幸せになると、より動く頻度が増え、より幸せになった人は、より動く
- 成果を出している人は、普段から「幸せ」を感じている(幸せだから成果が出ている)
- 幸せな人は、仕事の生産性が平均で37%高く、クリエイティビティは300%も高い。
- 「幸せ」は好きなことを楽しむだけで感じることが出来る
- 脳が発する欲求に応え、満足させることも大切
これらは決して難しいことではありません。
明日から…と言わず今日から…いえ、今から始めましょう。
ちょっとした自分の欲求に応えることなら出来るはずです。
たったそれだけで生産性とクリエイティビティを上げられるなら、やらない手はありませんね。