一流の料理を食べるとき、その作り方を知っている必要はない。食べ方さえわかれば良い。
財務諸表も同じ。
作り方を学ぶのは中々に骨が折れますが、読み方はポイントさえ押さえればそこまで難しくありません。
- 財務3表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書)で分かる情報
- 財務3表でとりあえず見ておけばいいポイント
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決算・財務諸表とは
新聞やニュース、ビジネスの場において良く見聞きする「決算」という言葉。
ある一定の期間のうちに発生した収入や支出を計算し、どれだけ儲かったのか(ときには損をしたのか)を明らかにし、その上で、組織が持つ財産(資産・負債)の状態を利害関係者に公表する。
簡単に表すと決算とはこのような一連の作業のことです。
- 損益計算書(PL:Profit and Loss statement)
- 貸借対照表(BS:Balance Sheet)
- キャッシュ・フロー計算書(CS:Cash Flow Statement)
決算は通常、1年に一度行われ、12月期決算や3月期決算など、法人であれば決算日はそれぞれ異なります。
例えば、「3月期決算」と表す場合は、3月末日が決算日で会計の締め日となり、4月1日~翌年3月31日までの期間を「会計期間」と呼びます。
国税庁の調査によると、決算期別の普通法人数は「3月期」が最も多く、上場企業だけで見れば、およそ7割が3月決算です。
ちなみに、個人事業主の場合、会計期間は「1月1日~12月31日」つまり、12月末日が決算日であり、一律に決まっています。
上場企業では四半期(3ヶ月)に一度、決算を行うことが義務付けられています。
家電量販店などの新聞折込チラシで「決算セール」や「期末売りつくし」などと銘打って宣伝しているのをよく見かけると思いますが、ここで言う「決算」や「期末」がそれにあたります。決算日まであと少し、だからもうひと頑張りして決算の内容を少しでも良く(売上を上げ、期末在庫を減らす)しよう!という企業の涙ぐましい頑張りの証でもありますね。
と話が若干逸れましたが、財務諸表とは、このような決算の結果を公表する際に用いる資料・決算書の事を表しているのです。
決算書は、学生で言うところの通信簿のようなものですね。
財務諸表がわかると何か良いことあるの?
さて、この財務諸表ですが、皆さんはどのようなイメージを持っているでしょうか。
まどろっこしくて、難しい。
私はそんなイメージでした。
ですが仕事柄、財務諸表から目を背けるわけにもいかず…。頑張って分かろうとしました。
関連書籍を数冊読んで、詳しい人に教えてもらって、また関連書籍を数冊読んで…。でも、分かりませんでした。
やっと枠組みがなんとなく見えたと思ったら、別の知識を入れた途端に複雑化し、自分の中で整合性が取れなくなる。
ああ、なんて向いていないんだろう…私のオツムが足りないのが悪いのか…。
仕事をしながらだったので、とにかく時間だけが削られ、焦っていました。
そんなとき、一つ良いことを知りました。それは、
全部を理解しようとしなくて良い。
ということ。
そりゃそうですよね。そうなんですけど、意外と忘れがち。全てをわかろうとしがちです。
レストランにご飯を食べに行ったとして、注文した料理全ての作り方まで知る必要はないですよね?
飲食業界にいて、ライバル店のメニューの秘密を探りたい!というならまだしも、普通の人はそこまですることはないでしょう。
ちょっと雑ですが、財務諸表も似たようなもの。よし、それでいいんだ!と勝手に納得しました。
オツムが足りないなら、理解のハードルを下げてやればいい。間違って理解するよりはマシだ。
財務分析が専門であったり、会計業務が専門でもない限り、「財務諸表の作り方」まで知っている必要は無いということです。
そう考えると、かなり気持ちが楽になりませんが?
あとは食べ方のレクチャーを受けて、財務諸表を食べてやればいいのです。
それでは、いただきます。
参考文献
損益計算書(PL:Profit and Loss statement)
何が分かる?
会社の儲け(「損」と利「益」を足し引きする)で「収益性」が分かる
「収入-費用=利益」というキホン構造
損益計算書は非常にシンプルでわかりやすい構造になっています。
緑色になっている「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税金等調整前当期純利益」「当期純利益」の5項目は、意味を知らずとも良く見聞きしないでしょうか。
これらは全て関連していて、始まりは一番上の「売上高」なんですね。
商品を作った段階の利益。粗利。
本業での儲け。売上総利益から、広告宣伝費や通信費、給与といった商品を売るまでにかかる間接費を引いたもの。
本業での儲けに、株や債券の配当など本来の事業以外の損益を加味したもの。
想定外の事態で生じた一時的な利益(特別利益)や損失(特別損失)を加味したもの。
税金等調整前当期純利益から法人税などを引いた利益。1年間の最終的な儲け。
貸借対照表(BS:Balance Sheet)
何が分かる?
右と左はバランス(均衡)する
「貸方」「借方」というものがありますが、ここではあえて説明しません。
理由は、わけがわからなくなるからです。
貸方と借方については、簿記3級のテキストなど、適切な教書を用いて勉強して下さい。こんな記事を書いておいて言えたことではないんですが、ネット上の曖昧な情報に惑わされると遠回りになります。
貸借対照表は「右」と「左」にわかれていて、右はお金をどうやって集めたかという「調達」について、左は集めたお金をどう使ったかという「使い道」についてが書かれている。それだけイメージできれば十分です。
この右と左の合計金額は必ず一致します。簿記の教科書では「バランスする」などと書かれていたりしますね。
右と左の金額がバランスする、だから「バランスシート」なのです。
キャッシュ・フロー計算書(CS:Cash Flow Statement)
何が分かる?
どれだけのキャッシュ(=現金)が出入りしたかで「将来性」が分かる
キャッシュとは現金のこと。キャッシュ・フローというのは現金の流れを意味します。
キャッシュ・フロー計算書がなぜ必要かというと、損益計算書では手元のお金がどれだけ増減したのかがわからないから。さらに具体的に言えば、損益計算書で算出された利益と実際のキャッシュ・フローは一致しないことがあるということ。
例えば、開発・生産に4000万円投じた製品を取引先に6000万円で販売した場合。利益は2000万円(6000万円-4000万円)となり、損益計算書に計上されます。では、売上の6000万円は、いつ貰えるのか。
ビジネスにおいては、商品の取引と同時にお金をオンタイムで渡すという場面はなかなかありません。もちろん一般的な消費行動は別です。コンビニで弁当を買うときは、弁当と引き換えにオンタイムで代金を支払いますが、ビジネスは違う。6000万円を持って取引先に向かうなんて怖すぎますよね。そんな取引をするようなところは裏の社会にしか存在しません。
取引の契約が成立し、財やサービスを提供したら、提供した側はお金を貰う権利があります。「売上債権」や「売掛」と言ったりもしますね。将来に支払いを受ける権利です。
売上は、財やサービスの提供時点で計上されますから、損益計算書には受け渡した時点で載っています。しかし、売上そのものはまだ受け取っていない。
売上と現金(キャッシュ)収入にタイムラグが生じるのです。
将来受け取れるのだから別にいいのでは…と思われるかもしれませんが、売掛が多くなると資金繰りを圧迫します。
世に言う「黒字倒産」はこういったことが原因で起きます。儲かっているのに、お金が入ってこないから、仕入れ代金や税金が払えない。
仕入れ代金や税金が払えないならまだしも(よくはありませんが…)手形の支払いが滞ったら大変です。手形代金の支払いが出来ないことを「不渡り」といいますが、この「不渡り」が2回出ると、銀行取引停止処分という重い処分が下され事実上の倒産となってしまいます。
キャッシュ・フロー計算書では、現金の流れにスポットを当てていますから、こういった危険信号をキャッチすることが出来ます。
会社の現預金の流れは損益計算書と貸借対照表だけではわからないのです。
まとめ
損益計算書
会社の儲け(「損」と利「益」を足し引きする)で「収益性」が分かる
貸借対照表
お金の使い道とお金の調達法で「安全性」が分かる
キャッシュ・フロー計算書
どれだけのキャッシュ(=現金)が出入りしたかで「将来性」が分かる